映画「彼女がその名を知らない鳥たち」

あなたの恋愛観が変わる

蒼井優 阿部サダヲ 『凶悪』『日本で一番悪い奴ら』

監督:白石和彌 原作:沼田まほかる『彼女がその名を知らない鳥たち』(幻冬舎文庫)

蒼井優 阿部サダヲ 松坂桃李 村川絵梨 赤堀雅秋 赤澤ムック・中嶋しゅう 竹野内豊

かの鳥 彼鳥 かのとり

INTRODUCTION

嫌な女・十和子、下劣な男・陣治、ゲスな男・水島、クズすぎる男・黒崎。

“共感度0%”の最低の登場人物しか出てこないのに、ページをめくる手が止まらないと話題を呼び、20万部を超えるベストセラーとなっている人気ミステリー小説が、ついに映画化された。

十和子への過剰な愛ゆえに陣治は黒崎を殺したのか。異常な献身と束縛の先には、水島に手をかけ、十和子を追いつめる不吉な未来が待っているのか、それとも――。

肌にまとわりつくような不穏で不快な空気を漂わせながらも、物語はあまりにも美しい“究極の愛”へとアクロバティックに着地していく。誰も裁くことができない予想を超えたラストを見届けたとき、観る者の胸に驚きと感動が広がる、まぎれもない愛の物語が誕生した。

人間が本質的に持つ闇や愚かさに迫りながらも光を感じさせる読後感で、多くのファンを生んでいる沼田まほかるの同名小説を映画化したのは、『凶悪』『日本で一番悪い奴ら』など実録路線のクライムムービーで高い評価を得た白石和彌監督。ノンフィクションを原作に骨太な社会派エンターテイメントを生んできた監督が、初めて本格的な大人のラブストーリーに挑む。

地位もお金もない陣治をひどく足蹴にしながらも、恋愛に依存せずには生きられない儚い危なっかしさを感じさせる十和子を演じるのは蒼井優。初共演となる阿部サダヲが、十和子に嫌がられながらも執着心を隠さない不潔で滑稽な男・陣治を演じている。甘くて薄っぺらな言葉を次々と繰り出し、十和子と肉体関係を結ぶ不倫相手・水島に松坂桃李。十和子が思い続けるかつての恋人で野心家の黒崎に竹野内豊。役者の底力を引き出してきた白石監督のもと、それぞれの役者がこれまでに見せたことがないまったく新しい表情を見せ、愛の概念を変えるような物語に命を吹き込んでいる。

STORY

15歳年上の男・陣治と暮らしながらも、8年前に別れた男・黒崎のことが忘れられずにいる女・十和子。不潔で下品な陣治に嫌悪感を抱きながらも、彼の少ない稼ぎに頼って働きもせずに怠惰な毎日を過ごしていた。ある日、十和子が出会ったのは、どこか黒崎の面影がある妻子持ちの男・水島。彼との情事に溺れる十和子は、刑事から黒崎が行方不明だと告げられる。どれほど罵倒されても「十和子のためだったら何でもできる」と言い続ける陣治が執拗に自分を付け回していることを知った彼女は、黒崎の失踪に陣治が関わっていると疑い、水島にも危険が及ぶのではないかと怯えはじめる――。

CAST


1985年8月17日生まれ、福岡県出身。99年にミュージカル「アニー」で舞台デビュー。映画初出演となった岩井俊二監督の『リリイ・シュシュのすべて』(01)で脚光を浴びる。04年に同監督の『花とアリス』で初主演を飾り、『ニライカナイからの手紙』(05/熊沢尚人監督)で初単独主演を務める。翌年に主演を務めた『フラガール』(06/李相日監督)で日本アカデミー賞最優秀助演女優賞と新人俳優賞を受賞、他数多くの賞を総なめにした。その他の主な映画出演作は『ハチミツとクローバー』(06/高田雅博監督)、『クワイエットルームにようこそ』(07/松尾スズキ監督)、『百万円と苦虫女』(08/タナダユキ監督)、『おとうと』(10/山田洋次監督)、『東京家族』(13/山田洋次監督)、『春を背負って』(14/木村大作監督)、『家族はつらいよ』(16/山田洋次監督)、『オーバー・フェンス』(16/山下敦弘監督)、『アズミ・ハルコは行方不明』(16/松居大悟監督)、『家族はつらいよ2』(17/山田洋次監督)、『東京喰種 トーキョーグール』(17/萩原健太郎監督)、『ミックス。』(17年10月21日公開予定/石川淳一監督)など。

1970年4月23日生まれ、千葉県出身。 92年より松尾スズキ主宰・大人計画に参加。同年に舞台「冬の皮」でデビュー。映画やドラマ、バンド「グループ魂」のボーカルとしても活動するなど、幅広く活躍している。07年に映画初主演を務めた『舞妓Haaaan!!!』(水田伸生監督)で日本アカデミー賞優秀主演男優賞を受賞。現在放送中のNHK大河ドラマ『おんな城主 直虎』には徳川家康役で出演しており、19年に放送予定のNHK大河ドラマ『いだてん~東京オリムピック噺~』では主演が決定している。またその他主な映画出演作は『妖怪大戦争』(05/三池崇史監督)、『なくもんか』(09/水田伸生監督)、『夢売るふたり』(12/西川美和監督)、『ぱいかじ南海作戦』(12/細川徹監督)、『奇跡のリンゴ』(13/中村義洋監督)、『謝罪の王様』(13/水田伸生監督)、『ジヌよさらば~かむろば村へ~』(15/松尾スズキ監督)『殿、利息でござる!』(16/中村義洋監督)など。

1988年10月17日生まれ、神奈川県出身。 09年に「侍戦隊シンケンジャー」にてデビュー。11年『僕たちは世界を変えることができない。』(深作健太監督)、『アントキノイノチ』(瀬々敬久監督)の2作で第85回キネマ旬報ベスト・テン新人男優賞、第33回ヨコハマ映画祭最優秀新人賞を受賞。その後は映画、テレビドラマ、CMなど多方面で活躍している。その他、主な映画出演作は『ツナグ』(12/平川雄一朗監督)、『マエストロ!』(15/小林聖太郎監督)、『日本のいちばん長い日』(15/原田眞人監督)、『ピース オブ ケイク』(15/田口トモロヲ監督)、『劇場版MOZU』(15/羽住英一郎監督)、『秘密 THE TOP SECRET』(16/大友啓史監督)、『キセキ -あの日のソビト-』(17/兼重淳監督)、『ユリゴコロ』(17年9月23日公開/熊澤尚人監督)、『不能犯』(18年公開予定/白石晃士監督)、『孤狼の血』(18年春公開予定/白石和彌監督)など。

1971年1月2日生まれ、東京都出身。 94年、TVドラマ「ボクの就職」(TBS)で俳優デビュー。その後、「星の金貨」(95/NTV)や「ロングバケーション」(96/CX)など話題作への出演が続き、97年には「理想の結婚」(TBS)と「ビーチボーイズ」(CX)で主演を務め、以降ドラマ・映画への出演が続く。主演した映画『冷静と情熱のあいだ』(01/中江功監督)では日本アカデミー賞優秀主演男優賞を受賞、そして11年には『太平洋の奇跡-フォックスと呼ばれた男-』(平山秀幸監督)でブルーリボン賞主演男優賞を受賞。その他、主な映画出演作は『あの空をおぼえてる』(08/富樫森監督)、『ニシノユキヒコの恋と冒険』(14/井口奈己監督)、『at Home アットホーム』(15/蝶野博監督)、『シン・ゴジラ』(16/庵野秀明監督・樋口真嗣監督)、『ラストレシピ~麒麟の舌の記憶~』(17年11月公開/滝田洋二郎監督)など。

1987年10月4日、大阪府出身。02年にダンス&ボーカルユニット「BOYSTYLE」で歌手デビュー。04年に映画『ロード88 出会い路、四国へ』で主演し、翌05年にはNHK朝の連続テレビ小説「風のハルカ」でヒロインを務め注目を集める。近年の映画出演作は『僕たちは世界を変えることができない。』(11/深作健太監督)、『僕達急行 A列車で行こう』(12/森田芳光監督)、『人生、いろどり』(12/御法川修監督)、『ポプラの秋』(15/大森研一監督)、主演映画『花芯』(16/安藤尋監督)ほか。TVドラマでは「東京タラレバ娘」(16/NTV)、「悦ちゃん」(17/NHK)など。

1971年8月3日、千葉県出身。劇団「THE SHAMPOO HAT」における全公演の作・演出・出演を務める。第52回岸田國士戯曲賞にノミネートされた『その夜の侍』を12年に自らの脚本・監督で映画化し第56回ロンドン映画祭や第36回モントリオール世界映画祭に正式出品。さらには同年の新藤兼人賞で金賞受賞、第34回ヨコハマ映画祭・森田芳光メモリアル新人監督賞を受賞している。一方で13年には「1丁目ぞめき」で第57回岸田國士戯曲賞を初受賞。16年には三浦友和主演の映画『葛城事件』を監督するなど舞台だけにとどまらず広く活動している。近年の映画出演作は『マイ・バック・ページ』(11/山下敦弘監督)、『鈴木先生』(13/河合勇人監督)、『岸辺の旅』(15/黒沢清監督)など。

1978年12月17日、北海道出身。03年、劇作家・演出家として創立から所属していた劇団「黒色奇譚」から独立し、「黒色奇譚カナリア派」を旗揚げ。(11年より活動停止中)同劇団他での劇作家・演出家・脚本家としての活動の傍ら、役者としても舞台や映画、テレビドラマなど広く活動している。主な映画出演作は『曲がれ!スプーン』(09/本広克行監督)、『結び目』(10/小沼雄一監督)、短編『solo』(12/米澤美奈監督)、『愛の渦』(14/三浦大輔監督)、『ロード・オブ・ツリメラ』(15/塩出太志監督)など。

1948年4月18日、東京都出身。劇団「NLT」出身。舞台を中心に、映画・TV・CMほか俳優として多方面で活躍する一方、舞台の演出も手がけている。10年に出演した「今は亡きヘンリーモス」「BLUE/ORANGE」では紀伊國屋演劇賞個人賞を受賞。同年は文化庁芸術祭演劇部門大賞受賞の「おそるべき親たち」でも喝采を浴びた。主な映画出演作は『獄門島』(77/市川崑監督)、『影武者』(80/黒澤明監督)、『47RONIN』(13/カール・リンシュ監督)、『最後の命』(14/松本准平監督)、『日本のいちばん長い日』(15/原田眞人監督)、『関ヶ原』(17/原田眞人監督)など。

STAFF


1974年12月17日生まれ、北海道出身。95年に中村幻児監督主催の映像塾に参加。以後、若松孝二監督に師事し、行定勲監督や犬童一心監督などの作品にフリーの演出部として携わる。10年に長編監督デビューを飾った『ロストパラダイス・イン・トーキョー』で注目を集める。長編監督作2作目となるノンフィクションベストセラーを映画化した『凶悪』(13)で、新藤兼人賞2013金賞をはじめ、第37回日本アカデミー賞優秀作品賞・脚本賞ほか各映画賞を席巻し一躍脚光を浴びる。16年には、現役警察官の有罪判決で世間を騒然とさせた稲葉事件をモチーフとした原作を映画化した『日本で一番悪い奴ら』と、日活の成人映画レーベル“ロマンポルノ”45周年を記念し発足した「日活ロマンポルノ・リブート・プロジェクト」第3弾を務めた『牝猫たち』という全く違うジャンルの作品を手掛けた。今後の公開待機作は、役所広司主演『孤狼の血』(18年春公開予定)等。

1948年、大阪府出身。主婦、僧侶、会社経営などを経て、初めて書いた小説「九月が永遠に続けば」で第5回ホラーサスペンス大賞を受賞しデビュー。その人間の深奥に迫る洞察力が話題を呼んだ。本作の原作にあたる「彼女がその名を知らない鳥たち」はデビュー翌年に発表した著作第2作目。その後も07年に「猫鳴り」、09年に「アミダサマ」、10年に「痺れる」と作品が続き、11年に発表した「ユリゴコロ」で第14回大藪春彦賞を受賞している。

1961年生まれ。94年に「無言電話」で第7回フジテレビヤングシナリオ大賞で佳作受賞。その後、「ラブジェネレーション」(97/CX)、「神様、もう少しだけ」(98/CX)、「大奥」シリーズ(03他/CX)、「ラスト・フレンズ」(08/CX)、等、数々の話題作の脚本手掛ける。06年にはNHK朝の連続テレビ小説「純情きらり」の脚本も担当し、07年には第15回橋田賞を受賞している。映画では『NANA』(05)、『大奥』(06)、『今日、恋をはじめます』(12)、『クローバー』(14)等。

原作者・沼田まほかる コメント

「彼女がその名を知らない鳥たち」には特別な思いがあり、その映画化となるこの作品を観ることに、なかなか勇気が持てずにいました。
しかし、ようやく意を決して観たところ、冒頭の蒼井優さん演じる十和子の姿に引き入れられて、そのまま息を詰めっぱなしで、最後の鳥の飛翔の場面まで一気に観てしまいました。蒼井さんの今までのイメージをやすやすと壊してしまう力に驚きました。本当に素晴らしい女優さんですね。
阿部サダヲさんもまた、えっと思うほど陣治にしか見えず、ふと見せる表情やしぐさに幾度も胸が締め付けられました。
水島、黒崎も非常に演じにくい役かと思いますが、松坂さん、竹野内さんとこれ以上はないような俳優さんが固めてくださり、私としては、なんというかほんとうに冥利につきる思いです。
気持ちが密着しすぎて客観的にはなれないのですが、たいへんな力作に仕上げていただき、監督さんはじめスタッフの皆様、そしてこのキャストの皆様に心より感謝しております。